会長声明・意見

令和2年司法試験に関する会長声明

2020年(令和2年)10月16日
山口県弁護士会 会長 上田和義

 本年8月12日から16日にかけて、令和2年司法試験が実施された。
 今年度は新型コロナウイルスの感染拡大及びそれに伴う試験日程の延期など困難な状況のなか、受験を選択した受験者に対しても、受験の回避を選択した法曹志願者に対しても、等しく心からの敬意を表する。


 当会は、2017年(平成29年)7月25日、2018年(平成30年)7月24日、2019年(令和元年)7月30日、それぞれ会長声明をもって法曹志願者の減少を指摘するとともに、司法試験合格者数の目安(法曹養成制度改革推進会議の中間取りまとめにおいて示されたところによると1500人程度)にとらわれることなく司法試験合格判定が厳正になされるよう求めた。
 法曹志願者の減少について、平成29年司法試験において出願者数は6716人であって1543人が合格した。平成30年司法試験において出願者数は5811人(前年と比べて905人が減少)であって1525人が合格した。令和元年司法試験において出願者数は4930人(前年と比べて881人が減少)であって1502人が合格した。このように、司法試験出願者は各年で1000人程度ずつ減少しているが合格者数は1500人以上を維持している。
 そして、令和2年の司法試験出願者数は4226名であり、前年と比べて、さらに704名が減少した。なお、新型コロナウイルス感染症の影響もあってか実際の受験者数は3703人となっている。
 このように法曹志願者の減少は深刻である。


 法曹養成制度改革推進会議の中間取りまとめにおいて、司法試験合格者数の目安は1500人程度と示され、同時に、この合格者数の目安は「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでない」とも決定したものである。司法は国民の権利義務や社会正義に深く関わるものであり、法曹は、その司法を担うものであるから、上記の取りまとめにおいても「法曹の質の確保」が重視されていることは、当然のことである。
 上述のとおり、司法試験出願者数が毎年1000人程度ずつ減少している現状において、もしも1500人程度という合格者数にこだわって合格ラインが引き下げられるようなことがあれば、司法試験制度に期待される選抜機能が大きく損なわれ、合格者の質を制度的に担保できなくなることが危惧される。司法試験の合格判定にあたっては、合格者数の確保のみが優先されるべきではなく、法曹の質の維持・向上という必須の要請を踏まえ、厳正に行われなければならない。
 したがって、当会は令和2年司法試験の合格判定にあたっても、厳正な判定が行われることを求める。
以 上