会長声明・意見

憲法第96条の発議要件を緩和する憲法改正に反対する会長声明

平成25年8月28日

山口県弁護士会 会長 大田明登
自由民主党は,日本国憲法第96条1項の憲法改正の発議を衆議院及び参議院各院の総議員の3分の2以上の賛成から,総議員の過半数によって行えるように改正することを内容とする日本国憲法改正草案を示している。憲法改正の発議要件を余りに厳格にすると,かえって主権者である国民の意思を反映しないことになってしまうというのである。
  しかしながら,憲法改正の発議要件を緩和するこの草案には次の理由から反対する。
  憲法第96条は,国の基本的なあり方を定める憲法改正の要件を通常の法律の制定や改正より厳格にし,憲法の安定性を担保している(硬性憲法)。
  これは,たとえ民主的に選ばれた国家権力であっても,濫用のおそれがあることから,個人の基本的人権の保障のため国家権力を縛るのが憲法であるという考え方に基づいている(立憲主義)。
  しかし,自由民主党の草案のように,憲法改正の発議を各議院の総議員の過半数で行えるように引き下げてしまうと,時々の政治的多数派の意向で簡単に憲法改正の発議ができるようになる。その結果,憲法改正を容易に行うことができるようになるが,それは国民の基本的人権が制約されやすい状況を生み出すことを意味し,立憲主義の趣旨を没却することになる。
  憲法改正においては,国民の承認が十分な議論の上でなされるべきことは当然である。しかし,憲法が保障する基本的人権の重要性を考えれば,主権者である国民から選挙された議員で組織された各議院においても,熟議の上で発議をすべきであって,これを軽視してはならず,通常の法律の制定や改正より厳格な発議要件が必要である。
  よって,自由民主党の憲法改正の発議要件を緩和する憲法第96条改正の提案に反対することを表明するものである。