会長声明・意見

死刑執行に抗議するとともに,最高刑のあり方についての国民的議論が尽くされるまでの間,すべての死刑執行を停止することを求める会長声明

2022年(令和4年)7月26日
山口県弁護士会
 会長 田 中 礼 司
 2022年(令和4年)7月26日,東京拘置所において,1名に対して死刑が執行された。古川禎久法務大臣による2回目の死刑の執行である。
 死刑は,国家が人命を奪い,罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪い去るものであるうえ,誤判に基づく場合は取り返しがつかない。
 わが国では,1980年代に4件の死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定しており,誤判に基づくえん罪の可能性は払拭できない状況である。
 現在,140か国以上の国が,死刑を廃止又は停止しており,死刑の廃止は国際的な趨勢である。2014年(平成26年)7月,国際人権(自由権)規約委員会は,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告した。また,2014年(平成26年)12月の国際連合総会において,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が採択されたが,国は,これらに配慮することなく,今回の死刑を執行した。
 日本弁護士連合会は,国に対し,死刑制度のあり方について国民的議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを求めてきた。その後,2016年(平成28年)10月7日に福井県で開催された人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを明言した。
 また,中国地方弁護士会連合会は,2019年(令和元年)11月1日「死刑制度の廃止を求める決議」を採択した。
 当会も,2016年(平成28年)3月5日,袴田事件を題材にしたシンボジウム「死刑を考える日」を主催し,死刑制度について県民に議論を呼びかけた。また,2018年(平成30年)12月26日には,「最高刑のあり方についての国民的議論が尽くされるまでの間,すべての死刑執行を停止することを求める会長声明」を出し,国民的議論が尽くされるまでの間,死刑執行を停止することを求めてきた。
 このような中,今回の死刑執行が行われたものであり,当会としては,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,改めて,国に対し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,最高刑のあり方について国民的議論が尽くされるまでの間,すべての死刑執行を停止するよう求める。
以 上