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1、警察庁は、平成19年9月、「改正」少年法施行に伴う少年警察活動規則の「改正」案(以下「規則案」という)を発表した。しかし、その内容には以下の問題点がある。
2、規則案第三章第三節「ぐ犯調査」の規定は、削除すべきである。
(1) ぐ犯少年とは、少年法第3条第1項第3号が定めている将来犯罪をおかすおそれのある少年であるが、規則案は、少年に「ぐ犯事由」と「ぐ犯性」があることを警察官が具体的に明らかにするように努めると規定している(27条)。すなわち、警察官が「ぐ犯事由」と「ぐ犯性」を具体的に明らかにするように努めさえすれば「将来、罪を犯すおそれがある」という、警察官の主観的な判断によって、少年に対する調査を実施できることになる。実際、規則案によれば、「ぐ犯少年であると疑うに足りる相当の理由のある者」に対して、警察官が調査を開始するということになる(規則案30条、20条1項)。
(2) しかし、「将来罪を犯すおそれがある」という「疑い」とは、きわめて曖昧である。警察官は、誰に対しても「犯罪をおかすおそれの疑い」を抱くことはできる。これでは、警察の権限行使の対象に歯止めがないに等しい。
この問題は、「改正」少年法の立法過程でも問題になり、警察官のぐ犯調査権限の及ぶ範囲が不明確で、対象の範囲が過度に拡大することの懸念から、国会での法案修正によりぐ犯少年の規定は削除されている。
それにもかかわらず、今回の規則案は、国家公安委員会規則の形式で、事実上警察自身が準則を策定して自らの権限行使の要件や方法を定め、「改正」少年法案から削除された規定を、規則案で復活させようとするものである。
国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である(憲法41条)。民主主義国家では法の支配が貫徹される必要があり、全ての行政機関の権限行使は、国会が定める法に基づいて行われるのが大原則である。なかでも、警察は、その権限行使が市民の人権を制約するおそれが高いことから、憲法31条以下で適正手続きの順守が強く求められている。
その警察が、自らの権限を、法律を無視して拡大することは許されないのであって、今回の規則案は、違法・違憲のものと言わなければならない。
従って、規則案第三章第三節「ぐ犯調査」の規定は、削除すべきである。
3、規則案第三章第二節「触法調査」の規定について 規則案は、警察官は、少年の調査にあたり、少年に対し、弁護士付添人を選任できること、及び、「意に反して供述を強制されることはない」旨を告知する規定を定めるべきである。
警察の取り調べは、少年であっても、保護者や弁護士の立会いがないままに密室で行われており、触法少年に対する調査にあたって、警察が幼い少年に対して不適切な取調べを行ない、虚偽の自白をさせて冤罪を生み出すおそれがあることは重大な問題である。
この問題意識から、「改正」少年法は、第6条の2第2項に、触法少年に対する調査は、「少年の情操の保護に配慮しつつ(行う)」旨を規定し、同第6条の3に、触法少年の調査に関し、少年に弁護士付添人の選任権を定め、同第6条の4第2項に、「質問に当たっては、強制にわたることがあってはならない。」と規定した。また、「触法少年に対する警察官の調査については、一般に被暗示性や被誘導性が強いなどの少年期の特性にかんがみ、特に少年の供述が任意で、かつ、正確なものとなるように配慮する必要があることを関係者に周知徹底すること。また、これら少年に配慮すべき事項等について、児童心理学者等の専門家の意見を踏まえつつ、速やかにその準則を策定すること。」等の内容の付帯決議が採択されている。
ところが、規則案では、警察官が少年に対し、調査にあたり、「弁護士付添人を選任することができる」旨を告知することを規定しておらず、また、規則案では、警察官が少年に対し、調査にあたり、「その意志に反して供述しなくてもよい」旨を告知することを規定していない。
これは、改正少年法の趣旨を反映させていないものである。
4、上述のとおり、少年の調査をより適切に行うという観点から、規則案第20条第4項の立会いを認める者の例示に、弁護士付添人を加えるべきである。
5、規則案第16条から、すくなくとも「詳細に」は削除すべきである。
規則案第16条は、きわめて多くの調査すべき事項をさだめ、しかも「詳細に」調査するものとしている。
しかし、そもそも、触法少年についての調査は、児童相談所の児童福祉司又は家庭裁判所調査官が行うことが予定されているのであって、警察官の調査は、その準備行為としての調査と位置づけられるべきである。少なくとも規則案第16条から「詳細に」は削除すべきである。
2007年(平成19年)9月25日
山口県弁護士会 会 長 松 崎 孝 一 |