弁護士会について/About Yamaguchi Bar Association

決議・会長声明

最低賃金額の大幅な引き上げ,審議会委員の多様化及び審議の公開を求める会長声明

2017年(平成29年)8月29日
山口県弁護士会 会長 田畑元久

1 平成29年7月27日,中央最低賃金審議会は,厚生労働大臣に対し,平成29年度地域別最低賃金額改定の目安について答申を行い,山口県の目安は,Cランク24円であった。
 山口地方最低賃金審議会は,中央最低賃金審議会が示す目安額を参考として,同年8月7日,山口労働局長に対し,地域別最低賃金の時間額を777円とする答申を行った。
 なお,山口県が答申した777円は,全国加重平均額848円より71円低く,東京都の958円よりは181円も低い。
 しかし,最低賃金である時間額777円では,フルタイム(1日8時間,週40時間,月173時間)で働いたとしても,月収13万4421円,年収161万3052円である。この収入だけで,労働者の生活を維持することは極めて難しく,病気や怪我などに備えて貯蓄へ回す金銭すらない。
 最低賃金法1条は,低賃金労働者の労働条件の改善を図り,労働者の生活の安定に資することを目的としている。これは,「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(憲法25条1項),及び「賃金,就業時間,休息その他の勤務条件に関する基準は,法律でこれを定める。」(憲法27条2項)の法意を実現したものである。
 労働者が安定した生活を送るために,最低賃金の迅速かつ大幅な引き上げが必要不可欠である。
 政府は,平成22年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,平成32年までに最低賃金を全国平均1000円にするという目標を明記し,平成28年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」にも,最低賃金を毎年3%程度引き上げ,将来は1000円程度に達する方針を示している。
 しかし,時間額1000円となったとしても,月収17万3000円,年収207万6000円にしか過ぎない。
 労働者の生活の安定のためには,可及的速やかに,時間額1000円以上の金額とし,時間額1000円を超え,更なる大幅な引き上げを行うべきである。
2 最低賃金審議会の委員は,労働者を代表する委員,使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもって組織される(最低賃金法22条)。労働者を代表する委員については,関係労働組会からの推薦に基づいて任命される(同法施行令3条)。
 しかし,最低賃金審議会に出てくる労働者を代表する委員のほとんどが大企業の正規社員の代表なのである。最低賃金の額より相当に高い額の賃金獲得者であり,非正規労働者である非労働組合員の声が,最低賃金審議会で反映されることは難しい。
 総務省統計局労働力調査によると,平成28年において非正規労働者の占める割合は全労働者の約37.5%であること,非正規労働者が平成27年平均よりも36万人も増加していること,最低賃金法の平成19年改正で生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとされたことに照らすと,中央及び地方の最低賃金審議会における労働者を代表する委員の選任については,実際に最低賃金の影響を受けることの多い非正規労働者を数多く組織する労働組合の代表の任命を積極的に進めるべきである。
 また,公益を代表する委員に関しても労働法を専門とする学者のみならず,生活困窮者の就労支援等を行っている団体の出身者や社会保障法を専門とする学者からの選任も検討すべきである。
3 現在中央及び地方の最低賃金審議会の多くは,実質的に非公開となっており,審理の内容や経過を検証することが困難となっている。すなわち,最低賃金という非正規労働者にとって重要な事項が決定される過程特に金額審議が密室審議されることは,審理の内容や過程を国民が検証することができず国民の知る権利を侵害するだけでなく,「みんなのことはみんなで決める」という民主主義にも反する。
 審理の適性の担保のため,広く国民及び県民に知らせるため,審議会の内容,経過を公開すべきである。
 鳥取地方最低賃金審議会は,審理の全面公開が実現されているが,何ら問題が生じていないことが,日本弁護士連合会の調査で確認されている。
 山口地方最低賃金審議会においても,審理の公開を積極的に推進すべきである。
4 以上より,当会は,中央最低賃金審議会,山口地方最低賃金審議会及び山口労働局長に対し,労働者の生活が安定し健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう,最低賃金の地域間格差を是正し,山口県地域別最低賃金の大幅な引き上げを求める。また,山口地方最低賃金審議会の委員特に労働者を代表する委員に実際に最低賃金の影響を受けることの多い非正規労働者を数多く組織する労働組合の代表者の任命を積極的に進めることを求める。最後に,審理の適正を担保するために,山口地方最低賃金審議会に審理の公開を積極的に推進することを求める。
 
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